「小規模宅地等の特例」は、相続税を大幅に軽減できる制度ですが、被相続人が老人ホームに入居していた場合でも適用されるのでしょうか?
この記事では、老人ホーム入居者がこの特例を受けるための条件や具体例、注意点についてわかりやすく解説します。
老人ホーム入居者でも特例が適用される?
結論から言うと、被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、条件を満たせば「居住用宅地」として小規模宅地等の特例が適用される可能性があります。
これにより、土地の評価額が最大80%減額されます。
特例適用のための3つの条件
老人ホーム入居者が特例を受けるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
条件①:老人ホーム入居前にその土地を自宅として使用していた
被相続人が老人ホームに入居する前に、その土地を「居住の用に供していた」ことが必要です。
つまり、自宅として使用していた土地であることが前提となります。
条件②:入居後も自宅を使用可能な状態で維持していた
老人ホーム入居後も、その土地を他人に貸し出していないことが重要です。
例えば、入居後に家を賃貸物件として活用している場合は、特例の対象外となる可能性があります。
条件③:老人ホーム入居の理由が要介護・要支援である
被相続人が「要介護」または「要支援」の認定を受け、老人ホームに入居していた場合に限り適用されます。
健康な状態で老人ホームに入居した場合は対象外となります。
具体例でわかる適用の可否
以下の具体例で、老人ホーム入居者の場合に小規模宅地等の特例がどのように適用されるかを確認してみましょう。
例1:特例が適用されるケース
- 被相続人Aさんは自宅(200㎡)に居住していたが、要介護認定を受け、老人ホームに入居。
- 自宅は入居後もそのまま維持され、賃貸や売却はしていない。
この場合、自宅は「居住用宅地」として認められ、特例を適用可能です。
土地の評価額が200㎡×50万円(路線価)=1億円の場合、特例を適用することで1億円×20%=2,000万円に減額されます。
例2:特例が適用されないケース
- 被相続人Bさんは自宅(200㎡)に居住していたが、老人ホームに入居後、自宅を賃貸として貸し出していた。
この場合、入居後に自宅が他人に貸し出されているため、土地が「居住用宅地」とはみなされず、特例は適用されません。
特例を受けるための申告手続き
老人ホーム入居者の場合でも特例を適用するには、相続税申告時に必要書類を揃えることが重要です。
具体的には以下の書類が必要となります。
- 要介護または要支援認定を受けたことを証明する書類
- 被相続人が居住用に使用していた土地であることを証明する資料(住民票など)
- 入居後も土地を維持していたことを示す書類(固定資産税納付書など)
注意点と専門家への相談のすすめ
老人ホーム入居者が小規模宅地等の特例を受けるには、条件や書類準備が複雑な場合があります。
特に次の点には注意が必要です。
- 土地の一部を事業用や賃貸用に転用していないか
- 他の法定相続人がすでに自宅を所有している場合の優先順位
- 申告期限(相続開始から10か月以内)を厳守
相続税申告をスムーズに行うためにも、税理士や不動産の専門家への相談をおすすめします。
まとめ
老人ホーム入居者でも、一定の条件を満たせば小規模宅地等の特例が適用され、土地の評価額が大幅に減額されます。
ただし、賃貸への転用や健康状態での入居など条件外となるケースもあるため、事前にしっかり確認することが大切です。
今後も相続税に関する記事を更新していきますので、ぜひ引き続きご覧ください!